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プルミエール~私たちの出産~

プルミエール~私たちの出産~ 監督:ジル・ド・メストル


以前から気になっていたフランスのドキュメンタリー映画。朝10時の回に日比谷まで間に合うように電車に乗りました。レディース・デーだったせいか館内はかなり混雑していて、映画のタイトル通りに妊婦さんの姿も多かったです。

22ヶ月の調査、取得したビザは39、236,000キロの行程を経て完成した、壮大な出産ドキュメンタリー。文化も人種も社会的、経済的立場も全て異なる、しかし母になることを選択した10ヶ国の女性が登場し、出産という個人的、かつ普遍的なテーマをさまざまな女性の視点からリアルに描いています。(←ほとんど、パンフレットの文章のまま)

冒頭はいきなり、メキシコでの「イルカと一緒の水中出産」です。医療機関には一切頼らない自分ひとりだけの出産を選んだアメリカのヴァネッサ、出産直前までステージに立ち続けたパリのダンサー、サンディ。極貧生活の中、自宅での命がけの出産を迎えたインドのスニータ、アフリカの広大な大地の中、昔ながらのしきたりにのっとり出産するマサイ族のココヤ、限りなく北極に近いシベリアの病院に医療用飛行機で運ばれ、たったひとりで帝王切開の手術に臨むエリザベート、世界最大の産院、ベトナムのツーズー病院で「迅速に」進められる分娩、そして昔ながらの日本家屋の中で極力医療行為の介入がない自然分娩を選択した日本の由起子・・・作者が病院主導の医療行為の介入する分娩よりも明らかに「自然分娩」を賛美しているなというバイアスは感じますが、女性の数だけ出産の形はあるのだということ、そして現代の日本に生きる私たちは、出産はほぼ100%安全なものと思ってしまうけれど、実際には命の危険と隣り合わせの中、医療が届かない現状のまま、はるか昔から続いてきた方法で出産する女性もいるのだということを感じ、身が引き締まるように思いました。
そして、私たちの今日があるのも、人類が始まってから現在に至るまで、出産が連綿と繰り返されたことで命のバトンが受け継がれてきたからです。

単に世界のさまざまな女性の出産を取り巻く現状を見るだけでなく、新しい命を前に「自分はどうありたいのか」を考えさせられる映画だったと思います。

それにしても、日本を取り上げた時のナレーションも全てフランス語だったというのも新鮮でしたが、日本の産婦人科全てが映画に出てきた知る人ぞ知る有名産院「吉村医院」のようなわけではありません。