As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

久しぶりにVOL-Netの勉強会

梅雨の長雨が始まった今日、田町の女性就業支援センター(旧 女性と仕事の未来館)でVOL-Netのテーマ勉強会を実施しました。
私がスタッフ参加したのは久しぶりです。

講師には横浜労災病院の腫瘍内科医、有岡仁先生(ひとし、と読みます。ジン先生ではありません)をお迎えして「症例から学ぶ 転移・再発乳がん治療」をテーマとする少々シビアな内容も含まれたものだったのですが、多くの参加者があって、VOL-Netらしい熱気にあふれた時間だったと思います。

講演は、乳がんの薬物治療の概略からスタートしました。
ホルモン治療薬、抗がん剤ハーセプチンなどの分子標的薬剤について作用機序による分類、説明です。
次に、データを見るのに欠かせないのが「薬物治療の評価方法」です。
どのくらい効いているのかの尺度となる「奏功率」はよく使われますが、他にも「腫瘍が増悪せずに安定している期間」や「全生存率」等で薬物治療の評価をしています。
ある治療をした時に腫瘍が増悪せずに半年以上安定期間が続く割合をclitical benefit rateと表すこともあります。

そして、いよいよ本題に突入、いくつかのケーススタディによって、薬物の選択について掘り下げていきましたが、今回はいずれも再発・転移例でした。
初発の術後補助薬物治療はガイドラインで決まっていることもあり、乳がん治療に関する講演会ではよく取り上げられます(VOL-Net
でもこれまでいろいろと実施しています)。でも、再発治療の場合は患者さんの状態ごとに違うものだと、これまであまりテーマになることはありませんでした。
しかし、今回の講演では「ホルモン感受性があるかどうか」「閉経前か閉経後か」「HER2発現はどうか」「生命を脅かす転移であるか」等によって薬剤の選択が変わり、またホルモン治療薬にしても抗がん剤にしても初発治療で使った薬剤によって選択が変わってきたり、初発からの期間によっても変わってきます。ハーセプチンを使う時の併用する抗がん剤の選択や、骨転移の新しい治療薬について、抗がん剤は原則として一種類すつ投与すること、そして3rd line, 4th lineに使われ始めた新しい薬のことなど、薬物治療全般にわたり中身の濃い講演でした。

治療による生命予後の延長は認められないこともあるという厳しい現実がありますが、腫瘍の増悪が抑えられることによって生活の質が改善されますし、また今後は多彩な治療薬のおかげで再発治療を早期に行った場合に生命予後期間も改善していくかもしれません。

休憩後は質疑応答の時間をじっくり取り、先生との活発なやりとりが行われました。個々の症状や治療の話になることで、参加者の理解も進んだのではないかと思います。

それにしても、毎回思うのは私が診断を受けてから約12年の間に治療方法やその選択が劇的に変わり、自分の受けた治療が何の参考にもならず、そしてスタッフも最新情報を常に求めていかなくてはということです。薬剤の名前も最新のザンクトガレンのコンセンサスもあやふやなことこの上ないので、意識して覚えていかなくてはと思います。

勉強会の後は田町の居酒屋さんにて懇親会を開きました。先生はいらっしゃらなかったのですが、集まったみんなでお酒も進んで話に花が咲いたのではないでしょうか?お料理は無国籍となっていましたが、イタリアンな内容でした。

講師の有岡先生にはお忙しい中お時間を割いて講演してくださったことを感謝いたします。