As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

バイス

映画のレビューはようやく4月に入りました…

f:id:hiyokomusica:20191002171558j:plain

バイス 監督: アダム・マッケイ 主演: クリスチャン・ベールエイミー・アダムス
1960年代半ば、酒癖の悪い電気工ディック・チェイニー(クリスチャン・ベイル)は、恋人のリン(エイミー・アダムス)に激怒され、彼女を失望させないことを誓う。その後、下院議員のドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)のもとで働きながら政治のイロハを学んだチェイニーは、権力の中に自分の居場所を見いだす。そして頭角を現し大統領首席補佐官、国防長官になったチェイニーは、ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)政権で副大統領に就任する。
ジョージ・W・ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーを描く社会派ドラマ。アダム・マッケイ監督、クリスチャン・ベイルスティーヴ・カレルをはじめ、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のスタッフ・キャストが再び集結。ベイルは大幅な肉体改造を行い、チェイニー副大統領にふんした。エイミー・アダムスサム・ロックウェルらが共演している。

副大統領のことを「vice president」といいますが、日本人にとっては「アメリカ大統領」の名前はよく知っていても、副大統領まではなかなか馴染みがないでしょう。日本の総理大臣以外の閣僚の名前だって怪しいものです。
とはいえ、ディック・チェイニー副大統領という名前はなんとなく記憶に残っていました。9.11テロが起こった時の副大統領ですね。そしてまだ存命中の人物を題材にしているのです。

9.11から始まった物語は、一転してディックの若い頃に戻ります。田舎育ち、名門イェール大学に進んだものの落ちこぼれて中退してしまったディックは田舎に戻ってきて、別の大学に編入します。
このまま田舎で地に足をつけた人生を送るのかと思っていたところに、政界との接点が現れます。まさに人生は巡り合わせ。そこからディックの波乱に満ちた「政治屋」人生が始まるのです。
政治家というのは「政治屋」と言われてしまうように、単に自分が世の中を変えたいという熱い意志だけを持って勤まるものではありません。魑魅魍魎が蠢く人間関係の中で機微を読み、味方をつけ、一歩抜け出す。自分がどの派閥についたか、という運命も左右します。時代を味方につけられず表舞台から去っていった人物は大勢います。
ディックはまさにそういう「政治屋」資質がある人物でした。人の波をかきわけ、くぐり抜け…しかし持病の心臓や娘のLGBTなど、どうにもならないことで後一歩、頂点に登り詰められない。ここで終われば悪名高きチェイニー副大統領は存在しなかったはずー
しかし、彼は持っていました。
ディックにとって最もラッキーだったのは、時の大統領がジョージ・W・ブッシュ(息子)だったことでしょう。「こんなヤツに権力を持たせたらいけない」ということを見事に体現してしまったのがチェイニー副大統領でした。在任中には、来日して第一次内閣だった時の安倍総理とも会談しています。

チェイニーが加担したのは何か…イラク戦争を起こしても、フセインが隠していたという大量破壊兵器は出てきませんでした。そればかりか、後のイスラム国(IS)出現の源まで生み出してしまったのです。

子ブッシュを隠れ蓑に、やりたい放題やったチェイニーの時代は、民主党オバマ前大頭領の就任とともに終わりを告げました。アメリカ大頭領は任期が決まっていますから、延々と悪夢のようにディックが政治を牛耳ることはなかったのです。それに比べると日本の政治は、なんだか長すぎのように感じますが…