やっぱり見られちゃった！

今日は産院での友達と親子５組の新年会でした。
毎月交代でお互いの家を行き来しています。お昼を食べてお茶を飲んで夕方までおしゃべりしていることが多いです。
さて、お昼に買ったお弁当を食べていた時･･･

「ねえ、この前ＮＨＫテレビに出てなかった？」
といきなり聞かれたものだから私はビビリました。
なんでも、あの放送があった日、お風呂から出てきてテレビをつけたら「日本のがん治療を問う」をやっていて、突然私が出てきてしゃべりだしたからびっくりした。でも10秒くらいで終わっちゃったし、名前が出たのも一瞬だったのではっきりと確かめられず、電話しちゃおうかと思ったけど生放送だったら、と思い、次の日の放送で確かめようと思ったら放送自体をすっかり忘れてた。そういえばお父さんががんになった人の話が出ていたし、もしかしてお父さんがやはりそうなのかしら･･･と思ったということでした。

その時同じテーブルで食べていたのは私と彼女のみで、他の３組は別のテーブルで子供に食べさせるほうに奮闘していました。どうやらこちらの話は耳に入っていない。

「え？何なのそれ？ＮＨＫなんかでるわけないじゃん」と否定することも可能でした。事実最初はそう言ってしまいました。
でも･･･もし今後別のことで私が乳がんを患ったと知ったとき、何でＮＨＫのこと隠してたの？否定するの？ってなるかもしれません。その時にまた言い訳をするくらいだったら･･･

少し時間をおいてから「そうよ。私が出たのよ」と答えました。「10秒くらいだったから誰も見てないかなって思ったんだけど、やっぱり見られちゃったね」
そして、「５年前に病気をしたのよ。あの放送は生放送ではなくて25日に収録したの。同じ経験をしている仲間と一緒に行ったの」と言いました。
彼女は「そうだったんだ･･･ごめんね。こんなこと聞いて。てっきりご家族に患者さんがいるかと思ったの。でも本当によかったね。もう完治したんでしょう？」

がんには「完治」という言葉はありません。乳がんの場合術後１０年経過すれば一応治癒とされますが。でも周りの人は、治療が終わって普通に生活を送っていれば「完治」したという言葉を使うものです。まして彼女と私が出会ったのは産院での母親学級。お互い妊婦だった時代です。病気はそれ以前の話なのですから「完治」という言葉が出てしまっても仕方ないのかもしれない。
手術を受けてから間もない頃の私だったら、きっと周囲の言葉1つ1つにとても敏感になって、ひっかかりを覚えていたでしょう。でも5年以上経ってから初めて病気のことを話す相手に対して、私は「あえてそれほど深くは語るまい。語る機会が訪れた時でかまわないし、まあ「過去のことよ」って感じで話せばいいかな」という気持ちになっていました。５年という年月が自然とそういう風にさせているのだと感じながら。

「今でも病院にはフォローアップの検診に行ってるよ。だから子供が一時保育に行くんだけどね。まあ「完治」っていうのかどうか分からないけど、主治医の先生はもう大丈夫だから子供を持ってもいいって言ったと思うんだ。治療がとりあえず済んで、先生が妊娠してもいいって言ったから妊娠したら、あの病院で産みなさいって紹介状を書いてくれて、それであの病院にしたのよ」
　私が自宅からは中途半端に遠い病院をわざわざ産む病院に選んだ理由はそうだったのかと彼女は分かったみたいです。そして「ごめんねえ。つらいこと思い出させること聞いちゃって」と何度も言っていました。

私自身は、乳がんのことを「辛い過去」とは思ってないので（というか、今は再建中だし、もちろん過去として完結したものではなく、今でもリアルタイムですから）、普段忘れている辛いことを思い出すという言い方には「ちょっと違うな」と思います。
でも、全く逆の立場で考えると、私にも彼女と同じような言葉しか思い浮かばなかったのではないかと思うのです。

この会話は２人だけの中で終了しました。
これから先、彼女と病気の話になるだろうか？と考えた時、おそらくならないだろうな、と思います。
時々芸能人が、何年も前の手術のことを「実はあの時の病気はがんでした」と告白することがありますよね。「今だから言えます」などといいながら。それに対してレポーターはあまりつっこみませんよね。「よかったですね」くらいにとどめています。まあ、そんなものでしょう、と私自身が思えるまでになったのでしょうね。

もちろん、もし彼女が乳がんに関することに突然向き合うことになってしまったときには、どうぞ私という体験者がいますから何でも話を聞くよ、と思っています。

ああ、でも一番大事なこと忘れてた。
私は「病気」としか言ってなくて、どこのがんだったかも言ってないのです！
母乳の話とかは今までも出ていたから、乳がんだとは思ってないかも･･･