As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

「少しは、恩返しができたかな」

昨日の夜TBSでやっていたドラマ、見ましたか?

北原和憲君は、高校2年生で、ユーイング肉腫というがんとはちょっと違うけれどがんと同じように転移能を持つ悪性腫瘍が見つかり、1年10ヶ月にわたる闘病生活を送りました。そんな中受験勉強を続け、見事に第一志望の東大に合格したのに、1日しか通学することができずに19歳でその生涯を閉じたのでした。このドラマはその実話をもとにしています。

和憲君が通っていたのは、駒場東邦高校という、あの開成、麻布高校に匹敵する男子進学校です。東大にも毎年何十人もの合格者を出しています。
病気が見つかってからの和憲君は、まず化学療法を受け、その後放射線治療を受けます。学校に通うことはできなくなっていましたが、高校3年の夏に大学を受験すること、その第一志望は東大にすることを決意します。お母さんは受験には大反対です。だって、治療をしながら深夜まで受験勉強をするなんて身体に負担が大きすぎます。

でも、和憲君は「目標を持っていたい」と言いました。目標があるから、東大に入ってやりたい勉強があるから、病気を治そうと頑張ることもできるのだと。そして担任の先生の病室に出向いての特別授業や、卓球部の仲間たちが届けてくれるノート、何よりお母さんを始めとする家族に支えられて勉強に打ち込みます。それなのに、秋が深まるころ、転移が見つかります。痛みもだんだん出てくる中、それでもお母さんに支えられながらセンター試験、2次試験と受けて、東大に現役合格するのです。

東大に入ることが人生の勝利ではありません。もちろん私は学歴が一番だとは思っていません。
でも、東大というのは付け焼刃のような知識では合格することはできない大学です。
真の実力が問われます。健康状態が良好でも、東大に合格するだけの実力を身につけることがどんなに難しいことか-だから、和憲君の努力がどれほどのものだったのか、想像がつかないことだったと思うのです。そして周りの支えがあったからこその合格だったと思います。
和憲君の目標は、たまたま東大合格だったのです。でも、人間って目標があるから生きられるものなんですよね。

東大の入学式を終えた和憲君は、結局授業には1日しか出ることができませんでした。
病気の進行は早く、もはや使える薬はなくなってしまいます。何もすることがないことがどれほど辛いか…そんな中で卓球部のメンバーとの楽しいひと時が和憲君に最後まで笑顔をもたらしてくれました。
和憲君に、もう少しだけでも、いえ卒業するまで大学生活をしてほしかった。勉強にも、他のことにも思い切り打ち込める大学生でいさせてあげたかった…和憲君がただ1日だけ受けた授業、どれほど楽しかっただろうと思います。

あの時、和憲君と同じクラスだった学生(東大では、1,2年生の教養部の学生は、語学の選択などにより、おおよそ50人くらいのクラス分けされます。文Ⅰ3組とか理Ⅱ10組とかあるはずです)は、たった1日だけ一緒に授業を受けた和憲君のことを覚えているでしょうか?もう学部は卒業して、社会に出たり大学院に進学していたりするでしょう。和憲君がクラスメートだったことを忘れないでいて欲しい、そして和憲君の分まで、人生の目標を定めた生き方をしてほしいと思います。