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放射線の勉強会

今日は、神奈川県立がんセンターの山下浩介先生をお迎えして乳がん放射線治療の勉強会を行いました。放射線治療をメインテーマとした勉強会は初めての試みです。
40人強の人数が集まり、VOL-Netの勉強会としてはやや小ぶりのアットホームな会となりました。

勉強会は放射線放射線治療の基礎知識」から始まり、乳がんではもっともよく使われる「乳房温存手術後の放射線治療」、「最初の放射線治療の取り組み」、「再発・転移に使われる放射線治療についてのトピックがありました。

まず大切な基本事項は、放射線とは光の一種であるということです。光は波長により、赤外線、可視光線、紫外線などに分けられますが、エックス線やガンマ線などの放射線も波長が違うけど同じ光なのです。
放射線は皮膚より深いところに達し、細胞に作用します。電気を起こして遺伝子の本体であるDNAを切断して細胞分裂を阻止するのです。だから放射線は、細胞分裂の頻度が高い細胞により強く作用します。がん細胞も分裂が盛んですから効きやすいわけです。

ところで、放射線治療というと「1回の治療にかかる時間はごく短いのに、毎日通わなくてはいけないのが面倒」といったイメージがあるかと思いますが、これにはちゃんと理由があります。
正常な細胞とがん細胞の大きな違いとして「正常細胞は、自分で傷を治す能力がある」ということがあります。が、がん細胞にはその能力がないのです。
放射線照射により、細胞のDNAは傷つけられます。しかし正常細胞はその傷を時間をかけて治すことができるので、少しずつ放射線をかけていくと、その都度傷つけられますが、また治してもいけるわけです。正常細胞が傷を治す時間が取れるように、ゆっくり時間をかけて治療のための照射が行われます。
その一方で、がん細胞にはダメージだけがたまっていきます。治すことができないからです。そして、ついには細胞が死に至ります。これが放射線を分割照射する大きな理由であるわけで、この話に私はすごく納得しました。

また、「放射線」というと原子爆弾」とか「チェルノブイリの事故」といったイメージが強く、「放射線によりまたがんができるのではないか」と懸念される声も依然大きいです。
しかし、ここでも大きな違いがあります。原爆やチェルノブイリでの被爆でがん発生が多くなったのは、爆発後もある程度の期間に渡り、放射線を出す能力のある物質(放射能のある物質)のためにそこにいる人間がずっと放射線を浴びていたからなのです。一方、治療で使われる放射線はスイッチを押している間しか出てきません。よって、放射線を浴びる量は治療の方がずっと少ないと言えます。実際、放射線治療が原因の発がんは、タバコの発ガン性を下回ります。

講義の内容はまだまだありますが、ブログではこのあたりまでにしておきましょう。これ以外にも温存手術後の放射線治療の副作用とその対策、通常行われる接線照射(25回通うことが多い)と追加で行われるブースト照射の違い、最近の放射線治療の取り組みとして、ガンマナイフ、サイバーナイフ、粒子線治療などの紹介、再発時に痛み、進行を抑えることを目的として行われる緩和医療としての放射線治療などについての説明がありました。

予定時間をオーバーしての2時間近い講義の後、活発な質疑応答が行われました。
私自身は全摘手術だったこともあり、放射線治療は受けていません。実体験がないとなかなかイメージしにくいところもありましたが、今日は放射線治療の基礎から最新治療法の紹介までなかなか守備範囲が広く、新たな知見の多い勉強会となりました。

次回は8月に「病理」をテーマにした勉強会の予定です。実は3年前にも行われているテーマですが、あれから3年、また新しい知見が加わっているでしょう。ご興味のある方、ぜひいらしてくださいね。

今日の会場となった「目黒区立平町エコプラザ」は東横線都立大学駅から徒歩10分、碑文谷の近くにあります。周囲は都内でも有数の高級住宅街、まさに「閑静な街並み」です。私の最寄駅とは全然違います!「ああ、ここに一軒家を持っているのはどんな人たちなんだろう?」と思ってしまいます。政治、経済界の大物と言われる方たちも住んでいるのでしょうね。皇太子妃雅子様のご実家も、それほど遠くないところにあるそうですよ。