As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

保健所にて

娘の1歳半の歯科検診のために区の保健所へ行ってきました。小児科医による健診は個別に医療機関へ行くので、すでにかかりつけの先生のところで済ませてあります。今日は歯科検診を主に、食事指導、歯みがき指導、そして保健師さんとの個別面談、さらに希望者は栄養士さんとの面談や臨床心理士さんとの面接(育児困難に悩む親の心理相談)などがセッティングされていました。
受付を済ませるとたくさんのパンフレットをもらいます。区で作成された「育児のしおり」のようなものもあります。「歯みがきとおやつについて」なんてこれから頭が痛くなるようなテーマもあります。
そんな紙の束の中に、ピンクのチラシが入っていました。

乳がんとブレストケア~(区の健康保健課の事業)
早期発見のためにできること 自己検診法について
講師 外科医師(乳腺専門医かどうかは不明)
対象 区内在住の30歳以上の女性 
入場料 無料  場所 保健所のホールにて
0歳から5歳までのお子さんの保育があります(無料)

そろそろ卒乳を指導される子供たちの母親を対象に、ブレストケアについて呼びかけているのです。
これまで「おっぱい」という観点でしか見てなかった乳房について、自分の健康のために振り返ってみよう、自己検診のすすめや、医療機関での定期検診の必要性を訴えているこの企画には、患者数が増えつづけ、また比較的若い患者さんが多い乳がんに対して、自治体として取り組んでいる1つの姿勢ではあると思いました。もちろん、中身が肝心なわけで、それがどういうものかはまだ分かりませんが。

さて、歯科検診は無事に済み、虫歯も見つからずに終わりました。
保健師さんとの面談に呼ばれると、部屋の中にはカーテンで仕切ったいくつかのブースがありました。私は受付も遅く行ったためか、室内に入った時に他のブースに人はいなかったのです。

保健師さんからは、まずこれまでの健診の結果などから娘の発育はほぼ標準通りにきているということを告げ、予防接種も終わっているので安心ですねと言ってくださいました。「宵っ張りの朝寝坊というところだけがちょっと困っているところでしょうか」と私が言うと、「朝は早く起こして、午前中にたくさん遊ばせるのがいいんですよ。保育園は主に午前中を外遊びの時間にしてますよ」ということでしたが、これは私が家事をグータラしているのが諸悪の根源なのだね・・・と反省です。

そして、健診に先立ち提出したアンケートにあった「両親の既往症」
「この時は・・・ずいぶんお辛かったのではないでしょうか?」
保健師さんはかなり言葉を選んでいらっしゃるようでした。そして、手元の台帳をじっくりと読んでいました。
それは、区で保管してある「子供の発育に関する台帳」だったのです。
出生届を出してから、家庭状況やこれまでの健診結果など全て記載されているのです。その中に、びっしりと私の乳がんについての記載がされていました。
思い出しました。「新生児訪問」で聞かれたときのことを。
多くの自治体の保健所でされていると思いますが、保健師さんや助産師さんが自宅に新生児訪問に来るのです。母子手帳を元に話をするのですが、ほとんどの場合は妊娠中の経過を中心に聞かれるようです。しかし娘の母子手帳には、母親の乳がん罹患歴が書かれていますから、俄然話の中心はそこに移っていったのでした。その時のことが台帳に載っています。手術を受けた病院は四国の松山であることや、その後の主治医は都内の乳腺外科であること、もちろん病院名も。ホルモン療法とその内容についてなどです。

で、その後の話はやっぱりそちらに行きまして・・・
「手術によって腕があがりにくくなったりするんですよね?」と聞かれれば
「リンパを取るとそうなりますよね。だからリハビリするんですけど。でも最近はセンチネルリンパ節生検なんかもあるので、事前に調べてリンパを取らずにすめば、上がりにくくなる心配はそんなにしなくていいんですよ」
「乳房再建されているんですね」となると
「今がエキスパンダーで、秋にシリコンへ入れ替える予定で・・・」
「そうなると、入院中はどうされますか?」
「私がかかっている形成外科は日帰り手術なんですよ。当日は一時保育を使うと思いますけど」
「日帰りで手術可能なんですね~」と言った具合です。
「今お仕事はされていないんですよね」と言う質問には
「資格取得のスクールに通ったり、患者会のスタッフをしていますが、収入を伴う仕事はしてません」
と答えると
患者会のスタッフをされているんですね。治療後にお子さんがいると励みにされる方もいらっしゃるのではないでしょうか」と台帳に書き込んでいました。
そのあたりでついに退屈した娘が部屋から脱走を試みたので面接は終了。結局娘の話より私の話がメインになってしまいました。
そして一言
「今度保健所でもイベントなどがあるようで、体験者としても思うところはたくさんあるのですが、子供を介してのお友達には病気のことは一切話していませんので」と言って出てきました。

健診のために保健所へ呼ばれるのは、次は3歳児健診までありません。おそらくそのころには転居できていると思いますので、今の区で保健所と関わるのはこれでおしまいかもしれません。
一見して分からなくても、みんないろんなドラマを持って生きています。私みたいな経験も、それほど珍しいものではなくなるのかもしれませんが、今後自治体でも「がん」について考える時に、身近に体験者がいるものだ、それは高齢者に限らないものであると認識してくれれば幸いです。

区のイベントについては、私は養成講座の日なので行けませんが(というか、もし参加したら1人マニアックな質問を講師にしていそうでコワイ)、このチラシをもらった人たちはどう受け止めているんだろう。やっぱり「私には関係ない」って人が大多数なのかな。ごく親しい人や身内に経験者がいる人がポツポツと参加するのでしょうか。みんなで誘い合って来るって風景をまだ想像することはできません。