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病理についての勉強会

日が落ちるのが急に早くなったな~と実感している夏の終わり?!の日曜日の今日、VOL-Netでは青山の東京ウィメンズプラザにおいて、東京共済病院の馬場紀行先生を講師にお迎えして

乳がんと病理検査」-もっとくわしく知るために-

というタイトルで勉強会を行いました。

乳がんの治療法を決めるカギとなる「病理検査」でもここでいろいろ言われる言葉って医学的専門用語バリバリで「???」ってままに終わってしまうことも多いことでしょう。今日はちょっと難しい病理について、病理検査で注目すべき項目、リスク分類、治療法についてといった話が最新情報も交えて紹介されました。
勉強会でのテーマとしても興味ある人が多いためか、はたまた馬場先生のキャラクターに惹かれる人が多いのか、当日を待たずして定員いっぱいとなったため申し込みは締め切り、それでも今日「申し込んでないのですが入れますか?」というぶっつけ本番で会場に来られる方がちらほらと見られました。

馬場先生を講師に、乳がんの病理をテーマとした勉強会は3年前にも実施しています。
そのときの懇親会で、大学では我が主治医K先生の1年先輩にあたる馬場先生がK先生のことを「じゃじゃ馬のミッちゃん」などと言ったことは覚えていらっしゃらないでしょう♪話がそれてしまいましたが、あれから3年の年月が過ぎて、基本的なラインは変わらないものの、病理検査から分かる情報やリスク分類、治療法など「医学はまさに生き物のように進化している」ということを実感させられる勉強会でした。

乳がん治療を受けた方なら聴いたことがある言葉かと思いますが「ザンクトガレンの国際会議」という国際ミーティングがあります。スイスのリゾート地、ザンクトガレンで2年に1度開かれるこのミーティングでは「乳がんの術後補助療法」について国際的なコンセンサスを得るための話し合いが行われ、ガイドラインが作られていくのです。前回は2005年に行われているのですが、ここで「これまでの(再発)リスク分類」が大きく変更になり、新しい「リスク分類、および治療法」が提唱されました。
細かいところはなかなか難しいですが、現在では乳がんの病理検査におけるインパクトのある要素として、次のようなものがあります。

・ホルモンレセプター発現しているか、いないか。
・リンパ節の転移があるか、ないか。
・組織学的悪性度(がん細胞の顔つき)のグレードはどのくらいか。
 →組織学的悪性度は、管腔形成、核異型度、細胞分裂の数、という要素の測定から「このがん細胞は
どのくらい正常な細胞とかけ離れているか」ということを調べます。正常に近い方からグレード1、2、3に分けられ、グレード3の場合はハイリスクになると考えられます。
・HER2の過剰発現はあるか、ないか。
 →がん細胞の表面にHER2と呼ばれるたんぱく質が過剰発現していると、ハイリスクと考えられます。また、HER2過剰発現の場合には「ハーセプチン」の効果が期待できます。

自分自身が手術を受けた6年前を思うと、病理検査で注目すべきところもずいぶん違っていたのでは?と思えてきます。私はホルモンレセプターがプラスで、リンパ節転移がないのは知っていますが、組織学的悪性度については本当に調べたのか分かりません。病理検査の報告書には、それらに該当する記述がなかったように思うのです(文章からなんらかの解釈はしていると思いますが)HER2については手術から2年後に保存してあった病理標本から検出の検査をして2+という結果がありますが、HER2の検査も簡易検査と時間のかかる精密検査があり、簡易検査では擬陽性になることも少なくないそうです。

でも今さら病理検査をやり直したくても、私の摘出病理標本は全部松山に置いてきちゃったから調べられないんですよ、ね~(東京には文書でしか報告がないから)

また、私がかつて薬屋の研究室に勤めたことがある身とあって興味深かったのは、HER2はがん細胞の細胞膜に発言する受容体タンパクですが、リガンドが未だに分かっていないこと。だから生理的作用も詳しく分からず、ただモノクローナル抗体で働きをブロックしたら乳がん細胞の増殖が抑えられたのだそうです。
おそらくリガンド探しをしている製薬会社はあるのではないか、見つかれば今のハーセプチンよりコストダウンできる薬剤が開発可能になるのではないかしら?と考えてしまいました。

なんだか文章だけ見ていると小難しいブログになってしまいましたが、今日の勉強会が、今後病気と向き合う上での心強さにつながってくれたら嬉しいな、と思いながら座っていました。
勉強会の冒頭で先生が「ここ20年間で乳がんは著しく増加している、中でも若年女性の発症が飛躍的に増えている。若い女性の乳がんをなんとか救いたいが、現在の乳がん検診では限界もある。少しでも啓発活動を進めていきたい。」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。会場にも私と近い世代かなと思われる参加者が結構いらっしゃいましたよ。

確かに若年女性では「乳腺が発達している」のでマンモグラフィーにしても超音波にしても見つけづらいことは確かです。でも自己判断が一番危険。経験を積んだ専門医に診断を仰ぐことが大切なことと思います。

娘を迎えに行く都合上、懇親会には参加できませんでしたが、この子(私の娘になったばっかりに生まれつき乳がんハイリスクですから)が大人になるころには乳がん早期発見の啓発がもっと根をおろしたものになっていて欲しいと願いつつ帰ってきました。