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パンダフルライフ

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パンダフルライフ 監督:毛利匡

ありそうでなかった、パンダのドキュメンタリー映画


私は自他共に認める「パンダ好き」ですが、予告編を見て「どうしても見たい」といてもたってもいられず前売り券をゲットしていました。「アンパンマン」「ポニョ」で映画館慣れした娘を連れて行くことに。パンダのドキュメンタリーとあってか、やはり子連れが多かったです。

いや~もうパンダがごろごろ出てくる。みんなで並んで笹を食べてる。子パンダたちがじゃれあって、走ってくる。もふもふしたパンダの感触?!それだけで「にんまり~」としてしまいます。パンダ好きにはたまらない。あー、和歌山へ行きたい。

物語の舞台は中国四川省成都大熊猫繁殖研究基地」と和歌山・白浜にあるアドベンチャーワールド1年に渡ってひたすら撮影したパンダたち。四川では海外クルーとして初めてパンダの産室の密着撮影が許可されました。

春はパンダの恋の季節。パンダが発情するのは1年のうちわずか3日だけ、その間にパートナーと出会わなければなりません。そして夏になると産室は出産、子育てを迎えるパンダたちでいっぱいになります。初めての子育てに奮闘する母パンダ。パンダは双子を出産することが多いのですが、自然の環境では一頭しか育てません。生命力の強い個体だけが生き残る世界ですが、繁殖研究基地では双子の赤ちゃんパンダを代わる代わる母親に抱かせて授乳させ、もう片方の子は保育器に入ります。飼育員は24時間体制で子育てのフォローにあたるのです。まるで日本の産院のNICU(新生児特定集中治療室)のようです。

先日神戸の動物園で生まれたパンダの赤ちゃんが生後4日で亡くなってしまいましたが、パンダの繁殖、子育ての難しさは想像以上でした。

中には、想像妊娠してしまうパンダもいるのですよ。パンダの新生児は体重100gほどと非常に小さく生まれるので、妊娠しているかどうか外見では分かりません。なぜかホルモン値は妊娠時と同じようになるので、飼育員さんには「予定日が来るまで」分からないのです。想像妊娠の場合、ある日突然妊婦特有の症状(食欲がなくなり、やたら眠ってばかりいる・・・人間と一緒だ)が消えて元通りの生活を始めることから、ああ、そうだったのね。ということになります。

そして、子パンダが生まれて半年すると、母と子の別れがやってきます。母パンダがいつまでも育児をしていると、次の子を産むために発情することができません。研究基地の目的は、あくまで絶滅の危機に瀕したパンダを繁殖させることなので、継続的な繁殖のために途中で子育てを終わらせるのです。そして母子は研究基地の中で生涯会うことはありません。子供と分かれて、心も身体もツライ時期にある母パンダですが、1週間ほどで子供のことを忘れていくといいます。

人間の都合でパンダの生息が危ぶまれるようになり、そしてまた人間の都合に合わせて繁殖させる-切なさを感じますが、一方で人間の努力も実り、いっとき野生のパンダは1000頭ほどしかいませんでしたが、現在では1600頭ほどにまで回復してきました。

そして、もう1つの物語は日本のアドベンチャーワールドで生まれた双子のパンダ「隆浜」と「秋浜」の中国への里帰りです。兄弟は4歳になった秋、日本を離れて母親の故郷、成都の繁殖基地へと里帰りします。日本にいつまでもいてもパートナーはいません。中国でパートナーと出会い、子孫を残していくのが彼らの使命なのです。
母や飼育員さんたちと別れ、新しい土地で時には気持ちのストレスから不安になってしまうこともあったけど、兄弟はまるで助け合って乗り切っているようです。やがて子パンダから大人へのステップを歩み始める「隆浜」と「秋浜」。彼らは日本では「リュウヒン」「シュウヒン」と日本語の音読みで呼ばれていましたが、中国では中国語の読み方で呼ばれるようになります。成都へ来て数日後、カメラマンが「シュウヒン」と呼びかけたときに振り向いたシュウヒンも、3ヶ月の検疫期間が過ぎて研究基地本体に移されることには日本語読みの呼びかけには応じなくなっていました。

そんな、2時間近くたっぷりとパンダに浸る映画なのですが、さすがに子供たちの集中力はそこまでもたなかったようです。アンパンマンやポニョと違って、途中でやたらトイレに立つ子供が多かった。娘も含めて私語も目立ちました。爆睡している大人もチラホラ。まあ、ひたすらパンダですから。しっかりしたストーリーがないので、少々難しかったかもしれませんね。
あと、中国の「パンダ外交」の思惑といった政治的な話は出てきません。

映画のクランクアップからひと月、四川省は大地震に見舞われます。
映画の舞台になった成都の繁殖研究基地は幸い被害もほとんどなくパンダも無事でした。しかし、震源地に近い繁殖施設は甚大な被害を受けました。パンダ以前に人々への被害が大きく、未だに爪あとは大きいです。パンダは無事だったものの、地震の後パンダの食料の笹の確保が困難になりました。この映画が、現地でがんばっているスタッフやパンダたちへのエールになれば、とプログラムは結んでいました。