As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

その日のまえに

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今日の幼稚園は「年少さん山歩き」
この幼稚園、いわゆる「遠足」は存在しません。観光バスで動物園に行ったりとかしないのです。遠足の代わりに季節ごとに「山歩き」をしています。車で10分ほど行くと、横浜に残された山林があり、自然歩道も充実しています。ここに「園バス」で乗り付けてハイキングをするのです。

山歩きは、先生だけでは監督が行き届かないのでクラスから数人「お手伝いの保護者」が参加します。で、水曜日の山歩きなので当然のように夫が立候補しました。
「先生とハイキングぅ~」とかなりウキウキしながら夫は出かけて行ったのです。

そこで私は、毎年秋に受けていた婦人科検診を実行することにしました。
年に1度のことなので、治療中からお世話になっていた銀座のクリニックの近くにある婦人科医院に行くことにしました。毎年診てもらっている先生の診察は午後からですが、すごく混んでいるというので早めに診察券を出しに行きました。
そうしたら、お昼には着いたのに「おそらく診察は4時半より遅いでしょう」
うわぁ、覚悟はしていたけどかなりすごい、というワケで空いた時間の有効利用で映画館へ(レディースデー)。やっと本題ですね。


余命わずかと宣告された主婦のとし子(永作博美)は、夫の健大(南原清隆)と二人きりで結婚当初に暮らしていた町を訪れる。死が訪れる日が来るまで、とし子は息子たちには病を隠し通そうと決めていた。一方、少年時代の友人に会いにきた佐藤俊治(筧利夫)もまた、死が訪れる日を迎えるためにこの町にやってきたのだった。

正直、見ようか、見まいかかなり葛藤がありました。

が、それでも「その日」を前に主人公はどのような思いでどのように生きたのか、そしてまたパートナーはどのように生きたのか見届けたかったのです。

エンドロールが終わって、しばし「う~ん」と固まってしまいましたね…

「その日」を迎えるとし子を演じるのは永作博美さん。彼女の演技と言えば、若年性アルツハイマーに侵されるヒロインの印象が強いです。そしてデザイナーであり社長の夫を演じる南原清隆さんは、シビアな状況をユーモアを交えて緩急つけて魅せてくれたと思います。

映画ではとし子の病気が何かは触れることなく(化学療法、という言葉が出たから何らかの腫瘍であると思うけど)具体的な医療シーンもありません。
それに、ただヒロインの死を描くのでなく、さまざまなエピソードを組み合わせているし、私は大林映画は初めてなのですが、この作品はかなり濃い「大林ワールド」が展開されているようです。
また、ストーリーを彩る宮澤賢治の「永訣の朝」がチェロのメロディーに乗せて染み入ってくるし、2人が新婚時代を過ごした浜風の街の風景も鮮やかです。

だけど、だけど。何というのか。

ひとは「その日」を前にこんなにキッパリとは生きられないよー こんなにダンドリよくなれないよ

たくさん泣いて苦しんで、周りの人も巻き込んで、感情をぶつけて…

それにね、とし子は息子たちに最後まで病を隠し通そうとしていたけど、ずーっとお見舞いにもいけなかった息子たちがやっとお見舞いに行ったときには「永訣の朝」だったなんて、ひどいと思う。私としてはね。
ママは退院してくるとばかり思っていたのに泣きじゃくる弟、そしてお兄ちゃんが父親にどなったシーン、やっぱり子供ってそう思うんじゃないの?亡くなる当日までほとんど何も知らされていなかった、そしてそれをあまり取り乱さずに受け止めているとし子の身内にも。

たぶん、このような題材の作品を見ている時って、無意識的に「体験者」としてのバイアスがかかってしまっているのだと思います。

この題材と大林映画が、上映時間内に私の中でしっくりミックスして消化できなかったのかと。

でも、とし子が夫に宛てたたった一行の手紙、なかなか書けない一言だと思いました。