As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

見てないからレビューにはならないけど

今日は年内最後のハンドベル部の練習、ジョン・レノンの「Happy Christmas」に挑戦しました。

さて、映画のレビューというのは「見たから」書くのであって、本編を見ずに書くものではないということは十分に分かっております。その私が予告編とチラシしか見ずに、しかも自分の主観だけでこれからのレビューもどきというか、単に自分の感情を書くのは大変アンフェアなことと分かっておりますが、このブログはワタクシゴトを書いている場所なので、お見苦しい場合はどうぞお許しください。

昨日「特命係長」を見るために横浜市内のシネコンに行ったわけでありますが。
そこで、来年公開される映画の予告編を見たわけです。
来年は、乳がんにまつわる映画が私が知っているだけでも2本公開されます。
1つはもうご存知の方も多いでしょう。昨年TBSのドキュメンタリーでも話題になった「余命1ヶ月の花嫁」です。そしてもう1つ、クオリティの高そうな作品があるのです。

それが「余命」(監督:監督 生野慈朗、主演:松雪泰子椎名桔平

がんの治療と出産のはざまで葛藤(かっとう)する外科医と、その夫を描く珠玉の人間ドラマだというのです。主人公は外科医、結婚10年にして待望の妊娠が分かるも、乳がんが再発する。治療を取るか、出産を取るか・・・彼女につきつけられたあまりにも過酷な選択。
予告編では、彼女は夫の前から姿を消すらしい。そして成長した少年が出てきて「僕の母は、命をかけて命をつないでくれた」というようなことを言うのです。

スクリーンを見ながら、私の全身が固まっていました。

風のガーデンも、フツウにドラマとして見られる私が硬直していました。

なぜなら。このストーリーを眼にするのは初めてではなかったからです。

4年前の夏、私は妊娠6ヶ月にして切迫流産のために入院していました。
「安定期」といわれる時期だというのにほとんどを病棟の住人として過ごしていたのです。
その日の夜、消灯時間がきても寝付かれず、ウテメリンの点滴をガラガラ引きずりながらデイルームに行って雑誌をめくっていました。文春だったか新潮だったか忘れましたが、谷村志穂さんの小説が連載されていました。妊娠が分かったばかりの女医さんが、同時に乳がんの再発に気がついたというのです。

見てはいけないもの、ものすごく嫌なものを眼にしてしまったような気分になってあわてて雑誌を閉じました。それだけ動揺したのです。生理的な理由で腫瘍マーカーは上昇したまま、外科の主治医には「何もできないんだから気にしないで」といわれても心で一寸気にかかりながら、今は妊娠の継続だけを優先に24時間点滴につながれたまま過ごしているというのに、なんでこんな小説を目にしてしまったのだろう?逃げるように病室に戻った記憶があります。

娘が生まれて、上昇したままの腫瘍マーカーは授乳終了を機に下がり始め、あの時病室で見た小説のことも忘れたままここまで過ごしてきました。それなのに・・・スクリーンの予告編は一気にあの時の記憶をフラッシュバックさせたのです。

あくまでも、この話はフィクションだし。
平坦な話を映画化してもあまり意味はなさないだろうし。
監督も作者も、命の大切さを描きたくて作っているのだし。

分かってはいるんですよ。自分の主観だけで判断しちゃいけないって。


でも、こういう話はもうイヤなんです。
今現在まで、娘も私も元気に生きているんです。
もういいじゃないですか。そういう母子なら、たくさんいます。それでいいじゃないですか?!

術後8年、病気のことでここまでガーンと足元を蹴飛ばされたことはなかったです。

まだまだ、私の中には病気のことを時に受け入れられないことがあるのだ、過去のことになんかなっていない、リアルに進行中なのだと思い知らされたのです。

決して映画のことを非難しているのではありません。きっとこの作品からメッセージをもらう人はたくさんいらっしゃるでしょうから。松雪泰子さんなら演技も素敵ですよ。ただ、私は彼女の演技は「容疑者X」や「フラガール」でもたくさん味わえたからもうお腹に入らないというだけです。

その後に始まった本編が「特命係長」というエンターテイメント性の高い作品だったことは、ホントに救いでした。私はひたすらスクリーンの只野にかじりついていました。

特命係長が終わり、劇場から出ると。ロビーには「余命」のチラシやポスターがたくさんあるのです。
それがどうしても目に入ってしまう・・・「パンフレット買おうよ」と言われて売店に行くと、キネマ旬報が目に付きました。たった1冊残った11月号。表紙の金城武に目が奪われ、フラフラと購入。もちろん特命係長のパンフレットも。その後トイレに入ると-

トイレの個室のドアにも「余命」の広告と「乳がん自己検診法」まで出ていたのです。


いやだ。いやだ。もういやだ。
楽しい映画を見にきたのに、なんでトイレの中にまで出てこなくてはいけないの?
さっきのキネマ旬報を取り出し、トニー・レオンのインタビュー記事を探し出して、乳がん自己検診法を隠しました(トイレの個室の中で私は何をやっているのだろう?)

シネコンを出たあと、隣のファミレスでランチに。
一緒に来ていた幼稚園のママさんが、ポツリといいました。
「予告編でやってた、松雪泰子さんの映画。ああいう暗いのってイヤよね」

彼女は何も知らないんです。

私が「特命係長」のように幼稚園では決して出さないもう1つの顔があることを(笑)。

そう、そのままにしておいたほうが、娘も私も幸せに過ごせる・・・なんだか改めてそう自分に言い聞かせてしまいました。

家に戻って、パンフレットの高橋克典の肉体美を改めて眺めつつ、
でもやっぱり私にとっての今年のNo.1はトニーレオン金城武なんだと彼らの容姿端麗、繊細な顔に見とれつつ(別に1800年前の衣装じゃなくても、今の服装でも全然イケてるのよ)、
映画館では、しばらく悲しい作品は見られそうもない、と思ったのでした。

そして今日、ハンドベル部のランチ会で「チョコレートパフェ一気食い」をやってかなり満足しました。