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孤高のメス

何かとツッコミを入れてしまう「医療系ドラマ」ですが、これは久しぶりに「よかった!」と思える作品でしたよ。
 
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孤高のメス 監督:成島出  主演:堤真一夏川結衣
 
 1989年、ある地方都市。市民病院に赴任した外科医の当麻(堤真一)は病院の体制に不満を感じながらも、次々と困難なオペに取り組み、医師としてやるべき仕事にまい進していく。しかしそんな中、病に倒れた市長のために、違法となっている肝臓移植手術を施すべきか否かの選択を迫られ……。
患者のたらい回しなど現代の医療問題に鋭く切り込む衝撃的な医療ドラマ。実際に医療に携わる大鐘稔彦の同名小説を基に、地方の市民病院に勤務する外科医が旧弊な医療現場で困難な手術に立ち向かうさまを描く。主人公の外科医を『クライマーズ・ハイ』の堤真一が演じ、『フライ,ダディ,フライ』『ミッドナイト イーグル』の成島出がメガホンを取る。ほかに、夏川結衣柄本明などが共演。リアルな医療現場に震撼(しんかん)させられるのはもちろん、鬼気迫るストーリー展開も見応え十分だ。
 
物語は、現役看護師のまま急死した母・浪子の葬儀のために帰郷した新米ドクターが、母の20年前の日記(当時彼は5歳の保育園児で母子家庭だった)を見つけて読んでいたら当麻先生が出てきた、という設定になっています。
ある地方都市の市民病院・・・なんだか10年前の手術を思い出しそうじゃないかと思っていたら、あれ?!袖ヶ浦ナンバーの車が走ってるの?!ってことは千葉って設定?!(さざなみ市民病院、なんて設定はいかにも房総ですが(内房線の特急はさざなみ号です)、ロケには三浦も使われたとかで。病院の建物は茨城にあったそうですよ。
 
さて、物語を通じて、もちろん微細な部分のツッコミはあったのですが(本当にあの時代に脳死の移植手術をやったら起訴されてしまうんじゃないのか、とか、あの10時間以上におよぶ大手術の日、浪子の息子はどこに預けられていたのだろうか、など)、それ以上に人間として、医師としての当麻先生をまっすぐに描いていました。
堤真一さんの当麻先生は、これまでに医療ドラマに出てきたどのドクターよりも、医師らしいドクターに見えました。そして、物語のクライマックスとなる脳死肝移植の実現を導いた、余貴美子さん演じる静さんが、臓器提供に向けて葛藤して決断していくところも、すごくグッときました。
冷静に考えれば、やはりフィクション、ありえない物語だと思う傍らで、この作品は、ムリに泣かせようという意図はなくて、ただ、命と向き合う人々を真剣に描いているのだと感じました。
また、生瀬勝久さん演じる野本医師など、いかにも大学の派閥を持ち出しそうな、どこかにいそうな感じのドクターで(でも、あのポンコツな手術はされたくない・・・)ヒューマン・ドラマといった感じで、登場人物の感情がストレートに伝わってきて、見に行ってよかったと思える作品でした。
 
だけど、手術シーンはかなりリアルに撮影しているので(もちろん作りモノですが、現役医師をビックリさせたほどのリアルな臓器が写ります)そういうものが全くダメな方にはちょっとしんどいかもしれません。
 
そして。追伸。
当麻先生と大川市長のお嬢さんの「見合い」の席で、市長が当麻先生の輝かしい経歴について語るのですが、その時にこんなことを言うのです。
「いや~、当麻先生が乳がんの手術をした時にね、乳房を切除するだけじゃなくて、なんと再建までしちゃったんだよ。まだ若い患者さんだったから喜ばれてねぇ」
同時再建?!それってもうスタンダードでしょ。
あ、これは20年前の話か。だったらまだ切除術が普通だった時か・・・
ってか、当麻先生は消化器外科が専門だよね。ピッツバーグで肝移植を専攻していた先生が乳がんの手術しちゃうのか・・・そうだよねー、あのころは乳腺外科なんて言葉はなかったんだよね。時代を感じるな~。で、何だって?当麻先生が再建までやっちゃうの?!同時再建ってのはね、外科医が切除手術をして、形成外科医が再建手術をする連携プレーのたまものなのよ。それを外科医が全部やるのって・・・
ワタクシ、再建は形成外科医にしていただきましたけど、さすがに再建だけは当麻先生に執刀して欲しいとは思わなかったですね(笑)