As You Like It     ~気が向くままに~

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さよならドビュッシー

この作品は、上映しているところが割りと少なくて、チケットショップにも券が出回らないので、結局定価で見ることになりました。でも、これは定価払ってでも見たかったんですよね。
 
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さよならドビュッシー 監督:利重剛  主演:橋本愛清塚信也
 
 ピアニストになることを目標にしている16歳の遥(橋本愛)は両親や祖父、いとこらに囲まれ幸せに暮らしていたが、ある日火事に巻き込まれ一人だけ生き残る。全身に大やけどを負い心にも大きな傷を抱えた遥だったが、ピアニストになることを諦めず、コンクール優勝を目指して猛練習を再開。しかし、彼女の周囲で不可解な現象が続発し……。
第8回「このミステリーがすごい!」大賞に輝いた中山七里の小説を、久々にメガホンを取る利重剛監督が映画化。火事で重傷になりながらも、懸命にピアニストを目指す少女が不可解な事件に巻き込まれていくさまを、ドビュッシーショパンの名曲に乗せて描く。主演は、『桐島、部活やめるってよ』など話題作への出演が相次ぐ橋本愛。ピアノ教師を、テレビドラマ「のだめカンタービレ」の吹き替え演奏で知られる人気ピアニストの清塚信也が演じる。
 
ミステリーを映画化したものは、原作を読んでしまっていると、どうしても頭の中のイメージとスクリーンの映像が微妙にずれてしまってツッコミを入れてしまいたくなるので、読まずに見るようにしています(って単に読書量が減っただけじゃないのか?とも思うけど)。この作品は「ミステリー」ではあるのだけど、ミステリーだと思って見てしまうとスケールが小さくなってしまいます(それでも私はいちばんのトリック?のところはホントにそのときまで分からなかったのですが)。また、戦前の旧華族のお屋敷じゃあるまいし、現在の日本にこんな絵に描いたみたいな大邸宅やお金持ちの家庭があるのだろうか?と思ってしまったのですが、舞台が名古屋ときいて妙に納得してしまった部分もありました。
 
ミステリーというよりも「さよならドビュッシー」のタイトルどおりに、ドビュッシーの音楽が主題となる音楽映画としてみると、本当にクオリティが高かったと思います。クラシック音楽が主題の映画で思い浮かぶのは「のだめ」ですが、演奏はもちろんプロのオーケストラやピアニストが吹き替え演奏していました。ところがこの作品で俳優としてもデビューを飾った清塚信也さんはもともとがピアニストなのです。一瞬「なんか普段とちょっと違う大泉洋?」と思ってしまったのですが、デビュー作としてはなかなか味が出ていました。なにしろピアニストですから、スクリーンに初めて出てきていきなりリストを弾いているのです。クライマックスでは、橋本愛さんの演奏を吹き替えますが、ドビュッシーの代表的な作品「アラベスク第1番」と「月の光」を途中で端折ることなくじっくり聴かせてくれます。その演奏を聴くだけでも何かじーんと心に染み入ってくるものがありました。
 
私は「アラベスク第1番」も「月の光」も過去に弾いたことがあります(特にアラベスクは、小5のピアノ発表会で弾いているのですが、当時は子供の演奏ですから、あんなに心に響かせるような演奏にはもちろん仕上がっていません。ドビュッシーは子供が弾いても音をなぞるだけになってしまいます)。そして、昨年の演奏会ではドビュッシー3曲に挑戦して、それは全然満足のいく出来ではなかったのですが、友人が「あなたにはドビュッシーがよく似合う」と何度も言ってくれたのです。だから余計に、この作品を見たかったのだと思います。
もう一度「月の光」を弾いてみようか、それとも今年は何を弾こうか・・・と思いを巡らせながら劇場を後にしました。