As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

アンジェリーナ・ジョリーさんの決断

今月、乳がん業界(って言うのはヘンだけど)を席巻した話題はなんと言ってもこのことでしょう。昨日の朝日新聞朝刊一面トップは「日本でも予防的乳房切除手術」でした。

日本では25人に1人が一生のうちに乳がんにかかると言われていますが(13年前の手術当時は30人に1人だったのですが)アメリカは当時から8人に1人と言われていました。そして遺伝子変異(BRCA 1)があった場合には乳がんにかかる可能性が高くなり、進行も早いケースが多いようです。この遺伝子変異による乳がんの場合、家系内に複数の患者が出現する家族性乳がんとなり、また卵巣がんの発生も多く起こります。アンジェリーナ・ジョリーさんはこの遺伝子変異があり、彼女の母もがんで亡くなっていて、本人が乳がんにかかる可能性は87%と言われたそうです。

アンジェリーナ・ジョリーさんで一躍知られるようになった予防的乳房切除手術ですが、アメリカでは以前から一般的に行われていました。若い女性が結婚前に乳房切除して子どもはミルクで育てたと聞いたこともあります。
アメリカでは、この遺伝子変異による家族性乳がんも多いので関心を持つ人も多いでしょう。乳房切除の後再建する人は日本人より圧倒的に多く、乳がんに罹患して乳房切除した場合には健側も切除してしまい、両方いっぺんに再建してもらうことが多いそうです。手術に対する意識、価値観についてはアメリカ人と日本人では国民性、感性の差もあると思いますが、アメリカでは国民健康保険はなく、各自入っている保険によって受けられる医療もまた違ってくるという事情もあるのではないでしょうか。BRCA 1の遺伝子変異のために医療保険に入れないという話もあります。
このニュースが報じられた時、ネットのコメント欄ではいろいろと「勝手に言ってるなぁ」とも思えそうな意見も転がっていましたが、私自身もしも家族性乳がんで今後罹患する可能性が80%以上などと言われたら予防的乳房切除を本気で考えてしまうと思います。アンジェリーナ・ジョリーさんはブラピとの間に実子も養子もいます。母としても大事な決断をしたのですね。

今回のニュースがきっかけで、乳がんには遺伝子変異が原因の家族性乳がんがあることや、それに対するさまざまな選択肢があることを知ってほしいし、医学的に意味のあることならば選択の自由が認められる社会になってほしいなと思います。

なお、家族性乳がんについてですが、
日本人の場合遺伝子変異による家族性乳がんの割合は少なく、遺伝子変異を伴わない単発的な乳がんの方が多いです。
遺伝子変異がなければ、予防的乳房切除を進められることはまずないと思います。
家族性乳がんが疑われる場合には、血縁者に3人以上乳がん卵巣がんの罹患者がいる場合や、血縁者に若年性乳がん患者がいる場合、両側性乳がん患者がいる場合、男性乳がん患者がいる場合なのだそうです。
もしも・・・と心配になる場合にはまずは「遺伝カウンセリング」を受けてみて、そこで遺伝子検査の必要性があるかどうか検討することになると思います。この検査は自由診療となります。
 
遺伝カウンセリングについては、以下のサイトに相談を受けられる医療機関が載っています。「新型出生前診断」が行われるようになり、遺伝カウンセリングに訪れる患者さんは増えているのですが、上記のサイトではアンジェリーナ・ジョリーさんにもあてはまる「遺伝性乳がん卵巣がん」についての相談ができるようになっています。外来は遺伝について詳しい医師と「遺伝カウンセラー」が担当します。カウンセラーは医師ではありませんが、遺伝に関する知識と心理学・カウンセリングについての知識を両方有している専門職です。
 
というわけで、この話題について私が思うところを書いてみました。