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四十九日のレシピ

この秋の映画レビュー、続きます。
 
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熱田良平(石橋蓮司)が急に妻の乙美を亡くして2週間が過ぎたころ、派手な身なりのイモ(二階堂ふみ)が熱田家を訪問する。突然現われ、亡き妻から四十九日を無事に迎えるためのレシピを預かっていると言い彼女の存在に良平は目を白黒させる。そこへ夫(原田泰造)の不倫で、離婚届を突き付けてきた娘の百合子(永作博美)が東京から戻って来て……。
NHKドラマとしても放映された伊吹有喜原作の小説を、『ふがいない僕は空を見た』などのタナダユキ監督が映画化した感動作。母が亡くなりそれぞれに傷を負いながらも、四十九日までの日々を過ごす間に再生への道を歩み始める家族の姿を描き出す。主人公に、『八日目の蝉』で高い評価を得た永作博美。その父親を石橋蓮司が演じ、二階堂ふみ岡田将生若手俳優も共演を果たす。新旧の演技派俳優が豪華共演を果たした繊細な人間ドラマが心に響く。
 
私がよく行く映画館ではやっていなかったので、久しぶりに「ブルグ横浜」のちょっと贅沢な感じの椅子にゆっくり座って見たのでした。
タイトルに「四十九日」が出てくるくらいですので、決して華やかなストーリーではありません。物語のスタートは、主人公が不妊治療がうまくいかない上に夫が浮気して相手が妊娠した、というまさに踏んだり蹴ったりのところから始まります。東京から実家に戻ってきた、といっても亡くなった母は彼女の実母ではなく、生前の母のことは分かっているようでほとんど知らなかったのです。その上、四十九日を無事に迎えるためのレシピを預かっているという派手な身なりのイモにいきなり翻弄されます。登場人物みんなの心がバラバラ、ボロボロになって空っ風に吹かれている中、母の四十九日に向けて動き始めます。「幸せの処方箋」ともいえるレシピを通して、傷ついた心は、少しずつ、少しずつ癒されて、人々の絆、家族の絆がふたたびつながっていくのです。
亡くなった母は両親を亡くしていたし、主人公の父と結婚した後も実子をもうけることはありませんでした。そんな母の年表を作ろうとしたとき、最初は「空白ばかり」と嘆いていたのですが、四十九日がきてそんなことはなかったことに気づきます。母は多くの人を幸せにしたし、また多くの人から幸せにしてもらっていたのです。女性が子どもを持たない生き方をしたとき、そこには空白ができてしまうのではないかと思っていた主人公ですが、決してそんなことはなかった、自分を踏み台にして多くの人が人生を踏み出せるような、生き方があったと気づけたことで、自分を取り戻していくことができました。そして、私自身がこれまで多様な生き方があると頭では分かっていながら、それが自分の中に陥ちることができずにいたけど、ふっと受け入れることができそうな気がしました。
淡々と、ほっこりできるストーリーです。主演の永作博美さんって、この映画の主人公の百合子とは違って、実生活では自分が不倫・略奪婚して2児の母なんだよなぁ・・・って一瞬思ったことも忘れさせてしまう、さすが女優さんだなと思いました。
あと、淡路恵子さんがパンチを効かせたセリフを何度も繰り出しますが、そこまで言わせる必要はあったんでしょうかねぇ・・・