As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

かぐや姫の物語

この秋の映画で、満を持して登場した作品といえば、やっぱりこれでしょう。
イメージ 1
 
 
今は昔、竹取の翁が見つけた光り輝く竹の中からかわいらしい女の子が現れ、翁は媼と共に大切に育てることに。女の子は瞬く間に美しい娘に成長しかぐや姫と名付けられ、うわさを聞き付けた男たちが求婚してくるようになる。彼らに無理難題を突き付け次々と振ったかぐや姫は、やがて月を見ては物思いにふけるようになり……。
数々の傑作を生み出してきたスタジオジブリの巨匠、高畑勲監督が手掛けた劇場アニメ。日本で最も古い物語といわれる「竹取物語」を題材に、かぐや姫はどうして地球に生まれやがて月へ帰っていったのか、知られざるかぐや姫の心情と謎めいた運命の物語を水彩画のようなタッチで描く。声優陣には、ヒロインかぐや姫にテレビドラマ「とめはねっ! 鈴里高校書道部」などの朝倉あき、その幼なじみを高良健吾が務めるほか、地井武男宮本信子など多彩な面々がそろう。

当初は「風立ちぬ」と同時公開かと言われていましたが、ずいぶんずれ込んで晩秋に公開されました。高畑勲さんの作品と言えば「蛍の墓」を思い浮かべますが、1つの作品に大変な時間をかける人だそうで、宮崎駿さんに比べれば作品数は少ないです。今回も8年もかけて制作したのですね。だからこそ?!アニメの作画の前にセリフを録音する「プレスコ」技法で、お元気だったころの地井武男さんの声が没後1年以上経ってから聞けることになったのです。宮本信子さんも、夏ばっぱをやるずっと前に嫗になっていたのでした。

さて、かぐや姫と言えばそのストーリーを知らない日本人はいないのではないかと思います。
そして、多くの日本の民話より遥かに古い時代に原作「竹取物語」は成立し、日本最古のSF物語と言われ、古文の授業ではお馴染みとなっています。しかし「まんが日本昔ばなし」だったら15分で終わってしまう話をどうやって膨らませ、深めていくのだろうということが見る前は想像できませんでした。実際、見終わってから気がついたのですが、ジブリ映画最長ともいえる130分以上の上映時間だったのです。でも、竹から生まれたかぐや姫があっという間に成人して、あっという間に月に帰ってしまったみたいで、その時間の長さを感じさせませんでした。
 
そのストーリーも,かぐや姫の幼なじみの捨丸が登場する以外は,基本「竹取物語」そのまんまです。
そして,流れるような画が水彩画のようでとにかく美しかったです。
ジブリのアニメは,基本細かいところまでしっかり線が書かれているのですが,これまでアニメで見たことが無いような,繊細な画になっていました。
光り輝くような美しい娘に成長したかぐや姫の元に5人の貴公子が求婚し,かぐや姫がお決まりのように無理難題を言うのですが,求婚者役に伊集院光さんや上川隆也さんが出ていたのが面白かったです。
そして,ストーリーはそのままなのに,かぐや姫の心情とか内面,ナイーブな心がしっかりと描かれていて,かぐや姫を「高貴な姫君」に育てたいばかりにすれ違っていく翁や,姫をあたたかく見守る嫗の気持ちも痛いように分かりました。予告編から何度となく出ていた「姫の犯した罪と罰」については,あまりその部分だけをクローズアップさせるのではなく,じわじわ来る感じでした。全てが輝いているばかりの月の都に住む姫が,清濁併せ持つこの地球で生きてみたかったこと,さまざまな想いを持ちながら生きることは素晴らしいこと・・・それは今現在地球に生きる人類にとって応援歌となるのかもしれません。
 
結末は分かりきっているのですが,いよいよそのシーンが来てしまったという時に流れる曲が,これまでのかぐや姫の世界観をまるで一変させるようなものです。
エレクトリカルパレードじゃないか・・・なんて声もネット上ではありますが,「天人の音楽」と題されたこの曲,サントラを持っていても,鑑賞までは絶対に事前に聴かないことをオススメします。そのシーンが来たときに,突如流れ始めることでハッとするはずです。なんでこの曲なんだ・・・!と思うことでしょうが,この曲にしようとした意図が,とてつもなく深く感じられるはずです。そして,頭の中ではてしなく再生されてしまうかも。
(私はさっそくYouTube上に上がっていた動画をダウンロードしてしまいました・・・もう削除されてしまってますが)
 
これほどまでに深い日本昔話はないかもしれません。ぜひスクリーンでの鑑賞をオススメします。
風立ちぬとどっちに軍配をあげるかと聞かれたら,ワタクシはこっちに一票かな。