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小さいおうち

この作品は、黒木華さんがベルリン国際映画祭で最優秀女優賞「銀熊賞」を受賞する前に見たのです。その時の劇場はそれほど混んでいる感じではありませんでした。
 
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小さいおうち 監督:山田洋次  主演:黒木華松たか子吉岡秀隆
 
健史(妻夫木聡)の親類であった、タキ(倍賞千恵子)が残した大学ノート。それは晩年の彼女がつづっていた自叙伝であった。昭和11年、田舎から出てきた若き日のタキ(黒木華)は、東京の外れに赤い三角屋根の小さくてモダンな屋敷を構える平井家のお手伝いさんとして働く。そこには、主人である雅樹(片岡孝太郎)と美しい年下の妻・時子(松たか子)、二人の間に生まれた男の子が暮らしていた。穏やかな彼らの生活を見つめていたタキだが、板倉(吉岡秀隆)という青年に時子の心が揺れていることに気付く。
 第143回直木賞を受賞した中島京子の小説を、名匠・山田洋次が実写化したラブストーリー。とある屋敷でお手伝いさんだった親類が残した大学ノートを手にした青年が、そこにつづられていた恋愛模様とその裏に秘められた意外な真実を知る姿をハートウオーミングかつノスタルジックに描き出す。松たか子黒木華吉岡秀隆妻夫木聡倍賞千恵子ら、実力派やベテランが結集。昭和モダンの建築様式を徹底再現した、舞台となる「小さいおうち」のセットにも目を見張る。

最初にも書きましたが、私がこの作品を見たのはベルリン国際映画祭の前でしたので、黒木華さんよりも松たか子さんにばかり目がいっていました。そして、黒木華さんのことは「くろきはな」さんだと思っていたのでした。
松たか子さんの時子奥さまにはやはり華やかさが感じられ、ちょっとあの旦那さまでは物足りないよねぇ、密やかな不倫の恋に走ってもしょうがないよねぇ…と思えたのですが、それをお手伝いのタキちゃんが一途な思いで止めてしまったことや、自分が故郷に疎開している間に奥さまは空襲で亡くなってしまい、奥さまへの思い故か生涯独身を貫いてしまったことに、古きよき昭和の時代を感じました。
いえ、奥さまの秘めた想いを封じ込めてしまったことだけをタキさんが背負っていたワケではないのですよね・・・タキさんには奥さまにも誰にも言うことができなかった、板倉さんへの想いがあったのでしょう。でも板倉さんはそうではなかったようなのです。そして、晩年のタキさんを演じた倍賞千恵子さんは誰にも言わずに心の中に秘め続けていたその思いを体現しているように感じました。だからこそ、タキさんに自伝を書かせた大学生を演じた妻夫木聡くんが、最初はその思いに全く気づかないからなんだかガサツでデリカシーのないやつにしか見えなかったんですけど、彼もどんどん変わっていったんですよね。
タキさんの家に飾られていた赤い屋根の小さいおうちの絵はタキさんの死後あっという間に処分されてしまいました。奥さまとタキさんの胸の中にだけ秘められた思いも全てなくなってしまったみたいで寂しくなってしまいましたね。