As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

あん

水曜の夜中に雨が降ったので、木曜だけ一瞬気温が少し下がったのですが、天気が良くなると猛暑が復活です・・・この週末は更に暑さが増すので気をつけてくださいね。
さて、随分遅れている映画のレビューです。

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あん 監督:河瀬直美 主演:永瀬正敏樹木希林内田伽羅

刑務所から出所したのち、どら焼き屋「どら春」の雇われ店長となった千太郎の店に、徳江(樹木希林)という女性がやって来る。その店で働くことを強く希望した徳江を千太郎は採用。徳江が作る粒あんが評判となり、店は大繁盛。そんな中徳江は、つぶれたどら焼きをもらいに来ていた女子中学生のワカナと親しくなる。ところがある日、かつて徳江がハンセン病を患っていたことが近所に知れ渡り……。
『殯(もがり)の森』などの河瀬直美樹木希林を主演に迎え、元ハンセン病患者の老女が尊厳を失わず生きようとする姿を丁寧に紡ぐ人間ドラマ。樹木が演じるおいしい粒あんを作る謎多き女性と、どら焼き店の店主や店を訪れる女子中学生の人間模様が描かれる。原作は、詩人や作家、ミュージシャンとして活動するドリアン助川。映像作品で常に観客を魅了する樹木の円熟した演技に期待が高まる。

河瀬直美監督の作品って独特の世界観がありますが、この作品は樹木希林さん主演で、実の孫である内田伽羅さんと共演するというので気になっていました。
あまり多くの映画館で上映はされていなかったので、どこでやっているのかタイミングを合わせるのが大変でしたが、その分劇場内にはたくさんお客さんが入っていました。

物語は息づかいが聞こえてくるくらいに淡々と進み、徳江さんがあんを煮るシーンは、あんに愛情が込められつやつやして本当に美味しそうに見えました。
しかし、徳江さんがあん作りだけではなく接客をするようになってから、ある噂が流れ始め、どら焼き屋さんの客足は遠のきます。普段はすっかり過去の病として全く意識することもなく、小説の世界に出てくる病と認識していたその病気が、現在でさえも人々に差別意識を植えつけるのだと愕然としました。
どら焼き屋は焼きそばやお好み焼きも作れるように改造して、オーナーの甥に継がせたいという大人の事情と、そのオーナーのおかげで立ち直ることができたからこそ、徳江さんが店を辞めたことに板挟みになってしまった雇われ店長、身勝手な母親と暮らすどら焼き屋の常連の女子中学生が、店長を誘って徳江さんを訪ねて行く…徳江さんから語られる思い…徳江さんはどら焼き屋であんを作るまでの人生、どれ程のものを背負って来たのだろう?
最後に桜が舞う中で、どら焼き屋から独立したと思われる元店長がどら焼きを一人売るシーン、きっと彼の思いは徳江さんに伝わったし、徳江さんの思いは中学生の女の子にも伝わったと思えました。