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「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

黄金のアデーレ 名画の帰還

いや~、寒い週末でした!(本来のこの時期の気温ですが・・・)
さて、こちらの作品も見てから少し時間が経ってしまいました。
「戦後70年」となる今年は、夏だけでなく年末に近いこの時期にも戦争をテーマとした作品が多く見受けられたように思います。

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黄金のアデーレ 名画の帰還  監督:サイモン・カーティス

アメリカ在住の82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、グスタフ・クリムトが描いた伯母の肖像画で第2次世界大戦中ナチスに奪われた名画が、オーストリアにあることを知る。彼女は新米弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)の助けを借り、オーストリア政府に絵画の返還を求めて訴訟を起こす。法廷闘争の一方、マリアは自身の半生を振り返り……。
ナチスに奪われた世界的に有名なグスタフ・クリムトの名画を取り戻すため、オーストリア政府を相手に返還訴訟を起こした女性の実話を基に描いた人間ドラマ。肖像画のモデルとなった女性のめいで、戦争に運命を翻弄(ほんろう)された実在の主人公をオスカー女優ヘレン・ミレンが好演する。彼女とタッグを組む弁護士に、『[リミット]』などのライアン・レイノルズがふんし、『ラッシュ/プライドと友情』などのダニエル・ブリュールらが共演。『マリリン 7日間の恋』などのサイモン・カーティスがメガホンを取る。

第二次大戦中のナチスドイツによるホロコースト、というと「アンネの日記」に代表されるユダヤ人迫害が真っ先に思い浮かびますが、ユダヤ人が所有していた多くの美術品が奪われ、そのまま返還されていない、という事実はあまり認識することはありませんでした。ユダヤ人は経済的に成功した人が多く、貴重な美術品を所有した人も多かったのでしょう。この物語の主人公マリアも絵のモデルとなった伯母のアデーレも故郷のオーストリアでは実業家の娘として育ち、お城のような邸宅に住んでいました。

迫害を逃れてアメリカに移住し、店を切り盛りしながら夫亡き後も平穏に過ごしてきたマリアは、姉の死をきっかけにオーストリア絵画館に寄贈されたと思っていた伯母の肖像画が自分に所有する権利があることを知ります。音楽家シェーンベルクの血を引く弁護士ランディとともに返還の訴えを起こすのですが、戦後にナチスから国の宝とも言われるアデーレの画を取り戻したオーストリア政府が簡単に返還するはずがありません。裁判は容易なものではありませんでした。

物語は現在の裁判シーンと回想シーンが交互に出ながら進みます。マリアの華やかな少女時代、結婚、ドイツのオーストリア侵攻により次第に危うくなる我が身、両親をウィーンに残して間一髪の逃避行…
最初は金の為に裁判を引き受けたランディも、ウィーンで自分の曾祖父もまたホロコーストの犠牲になったことを知り、ユダヤ人が奪われたものを取り戻したいと勝てるはずがないと誰もが思っていた裁判に立ち向かっていくことになります。

ついにオーストリアの法廷で、アデーレの肖像画がマリアに返還される判決がくだった時、マリアは笑顔を浮かべただけではありませんでした。この絵が海を渡ってアメリカに行けるのに、この気持ちは何…?オーストリアに残したまま、2度と会うことがかなわなかった両親への思いがこみ上げてきたのです。

アデーレの肖像画は、今ではニューヨークで見ることができますが、未だに所有者に戻らない美術品は10万点にも及ぶそうです。戦後70年といっても、やはり戦後はまだ終わっていないのではないかと強く感じた作品でした。