As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

この世界の片隅に

いやぁ・・・寒かった。雪は降りませんでしたが本当に寒すぎる週末大寒波でした
部屋の中はヒーター入れっぱなしなのはもう当然ですが、部屋を一歩出ると冷気が身体に突き刺さってくるような感じでした。そしてフツウに靴下を履いているだけでは床が冷たすぎるので、スリッパ履いてました。

では、昨年12月に見た映画のレビューの続きをいきますね。

イメージ 1

この世界の片隅に  監督:片渕須直 声の主演:のん、細谷佳正

1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。
「長い道」「夕凪の街 桜の国」などで知られる、こうの史代のコミックをアニメ化したドラマ。戦時中の広島県呉市を舞台に、ある一家に嫁いだ少女が戦禍の激しくなる中で懸命に生きていこうとする姿を追い掛ける。監督にテレビアニメ「BLACK LAGOON」シリーズや『マイマイ新子と千年の魔法』などの片渕須直、アニメーション制作にテレビアニメ「坂道のアポロン」や「てーきゅう」シリーズなどのMAPPAが担当。市井の生活を壊していく戦争の恐ろしさを痛感する。

昨年の秋は「君の名は。」のメガヒットに続き「聲の形」もヒットするなど、ジブリ、ディズニー、子供向けアニメの劇場版以外の良質のアニメ映画が多く作られましたが、こちらの作品も「とてもいい意味」で期待を裏切ってくれた作品でした。
公開時には「資金調達のメドが立たず、クラウドファンディングによってようやく映画を作ることができた」ことがニュースとなっていましたが、まるで単館上映のような規模で公開されたのに、右肩上がりに興行収入も観客動員数も増えて200館以上の劇場で公開され、つい最近キネマ旬報ベスト・テンで邦画1位となったのでした。

とは言え、私も最初は
「戦時中の広島の話なんて、結末が見えているような気がするし、それに主演が世間を騒がせた『のん』じゃなぁ…」
とイマイチ見に行きたいとは思えなかったのです。
しかし、先に一人で見に行った夫が予想以上に良かったというので、それならばと行ってみることにしました。

物語はまだ戦争の色がない広島の街中をお使いを頼まれた幼いすずが歩いているところから始まります。
この時代、既に都市部ではクリスマスセールが行われていて、広島の市街地にもツリーやサンタの彩りがありました。ここで、すずはフシギな体験をしたのですが、その時将来夫となるひとと出会っていたことに気がついていませんでした。
絵を書くことが好きだった少女時代を過ごしたすずは、18歳の時見合いで結婚が決まり、広島から呉へと嫁ぎます。病弱な義母の代わりに家事一切を担い、出戻りの義姉にキツく当たられたりとその時代の一般的なお嫁さんが経験していたごく普通の日常が淡々と過ぎていきます。結婚したてのころはドジばかりしていたすずが、戦局が悪化して日に日に生活が厳しくなる中、少しでも家族が楽しく過ごせるようにたくましく成長していきます。
昭和20年になると日本中の都市が空襲に見舞われるようになりますが、広島県内で多くの空襲を受けたのは広島市ではなく、海軍の拠点があった呉だったのです。呉の街がほとんど焼けてしまった大空襲の時に救援物資を届けてくれたのは広島の人たちでした。そんな広島もあの日の朝に落とされた原爆で一転してしまいました…

能年ちゃんことのんさんの声がすずのキャラクターととても合っていて(若い頃の市原悦子にもちょっと似ているんじゃないかと思ったけど…)、ほのぼのとさせられました。
特別な反戦メッセージが込められた作品ではないのですが、まさに「この世界の片隅に」生きる何気ない日常を戦争が、そして原爆が奪ってしまった悲しみが伝わってくる秀作だったと思います。