As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

17.6.22

この1週間は、梅雨空が続くそうで今日もずっとムシムシ、ベタベタとしています。
そしてこの週末は、この病気を体験した方にとってはなんとも心がざわつき、沈んだのではないでしょうか?
私もクリニックのお茶会や中目黒のサロンでその話題に触れることは多かったです。
いや、今後もその話題になることはあるでしょう。

病気の診断を受けるまでの経緯、受けてからの治療について週刊誌等でいろいろと玉石混合な情報が流れていて、治療経験者の立場から見ると疑問に思えた部分も正直ありました。
温浴療法や酵素風呂といった代替療法の名前ばかりが目に付いたことや、またこれまでの報道が結局は「当事者で無い世間一般への涙に訴えかける」ものに見えてしまった、そしてそれらに対するある意味予想通りな周囲の反応(NHKでもトップニュースとして扱い、再発治療中の患者さんが涙する姿を放送・・・官房長官のコメントまでが流れる・・・週末に会った人との会話の中では「ブログってエビゾウよね?」という言葉が出るなど)にも、なんとなく辟易するものを感じてしまいました。

「ブログは、同じ病気と闘う人たちに多くの勇気を与えている」という何度もニュースで流れたフレーズについても「勇気や元気をもらっているよね」という話題になったことも実際にはありません。正直、リアルな表現に現実を感じて、辛くて見られないという方の方が多かったと思います。
まあ、私も同じ病気の体験者サイドと世間一般との温度差にはもう慣れてしまっていました。

そして週明け、今日は勤務日ではなかったので家事をしながらいつものようにテレビを流していたところ、フジテレビの「ノンストップ」にかつてお目にかかったこともある方のインタビューが流れはじめました。
乳がん患者会イデアフォー」の中澤さんです。
もう10年以上前かと思いますが、VOL-Netの活動を通じてお会いしたことがありました。
思わず手を止めてテレビの前に立ち止まりましたが、彼女の言葉にはストンと陥ちるものがあったのです。

「患者の立場でブログを見ていると、いちばん関心があるのは、

『どのような治療を受けたのか、どんな薬剤を使ったのか、そしてその効果はどうだったのか』

ということでしょう。彼女のブログには、それらの情報は本当に少ししか無く、その点は残念だったと思っていた人(患者)もいました。しかし、彼女は著名人ですから、実際の治療にあたっている医療関係者や周囲の人々への影響を考えると、具体的な治療法やその効果について明らかにすることはむしろできなかったのだと思います。そう考えると、とても賢明なひとだったのでしょう」と。

体験者としての思いを的確に表現されていて、さすが中澤さんだと彼女の賢明さに感動したのでした。
著名人の闘病が一般に与える影響は大きいですが、医療関係者ではない当人からの情報発信もまた不確かな情報になってしまいます。検診や治療についての正しい知識の啓蒙は専門家の役割であり、メディアはセンセーショナルではなく、専門家の正しい言葉を分かりやすく一般に伝えてほしい。その上で、病気と向き合いながらのありのままの心の動きを率直に綴ったことばの数々が珠玉となってさまざまな立場のひとびとの心に届くと思います。

小林麻央さんのご冥福を、心よりお祈りいたします。