As You Like It     ~気が向くままに~

「ふるぼう」のブログがYahooから引っ越しました。

泣き虫しょったんの奇跡

映画のレビューがあまりにもたまってしまったので、昨日に続いてどんどん書いていきたいと思います。


幼少期より将棋一筋で生きてきた“しょったん”こと瀬川晶司(松田龍平)は、プロ棋士の登竜門である新進棋士奨励会に入会する。しかし、「26歳の誕生日までに四段昇格」という規定への重圧から勝てなくなり、年齢制限により退会する。途方もない絶望と挫折感を味わう晶司だったが、親友の鈴木悠野(野田洋次郎)や家族など周囲の人々に支えられ、夢をかなえるため再び立ちあがる。
異色の脱サラ棋士瀬川晶司の自伝的小説を、松田龍平を主演に迎えて映画化。将棋一筋だった主人公が、1度は挫折しながら再び夢に挑む。主人公の親友かつライバルを演じるのは、松田の友人でもあるミュージシャンの野田洋次郎。松田とは『青い春』などで組み、自身もかつてプロ棋士を目指していた豊田利晃がメガホンを取った。

藤井聡太七段の活躍ばかりが注目されている将棋界ですが、泥臭くも奇跡を起こしてプロ棋士となった瀬川五段の実話に基づく物語です。
泣き虫しょったん、というからには織田信成くんばりに泣いてばかりなんだろうか?と思っていたら、予想外に泣いているシーンは少なかったです。主人公を演じる松田龍平さんは飄々と、そして淡々とした瀬川五段なのですが、ここぞという時に涙が演出されていました。

主人公が淡々としているように、物語もまた淡々と進んで行くのですが、その中で濃く描かれていたのが奨励会時代の話です。瀬川さんがプロ棋士への道を選ばなかった親友と分かれて奨励会への道を切り開いたところまでは順調に見えましたが、そこからの道は容易ではなく、しかも年齢制限という期限があります。そこは藤井七段のような華々しい活躍ではなく、焦りや葛藤、そして多くの挫折が渦巻いていました。

プロ棋士への夢が破れた瀬川さんが、その後社会人となってから再びアマチュアでの棋士を目指し、その活躍がやがてプロ編入試験へ続いていくという物語の後半は、松たか子さん演じる小学校時代の恩師登場以外は、やはり淡々と進んでいきました。小学校時代からの親友がいい年になってもずっと隣の家で両親と一緒にいるところにはツッコミを感じましたが、それも淡々と物語とともに過ぎ去っていきました。

奇跡というタイトルの割には全体的にあっさりしたストーリーでしたが、その中にも多くのドラマがあり、そして今後の瀬川さんの活躍を期待したくなりました。