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天然氷のかき氷

あっという間に夏休みも終わりとなってしまいました。今年の夏は「スーパー猛暑」の予報は外れたものの、大雨の被害が全国で多発し、関東では梅雨寒のような日真夏日猛暑日が交互にくるというこの上なく過ごしにくい夏休みでした。

そんな夏でしたが、今年私が夏の間にやりたかったことの1つに「天然氷のかき氷を食べる」ということがありました。

ただのかき氷でしたら、冷凍庫の氷をかき氷器でガリガリかいたらすぐにできます。でも家庭で作るかき氷って、なんだかガリガリしちゃってすぐに飽きてしまうのです。
特に我が家のかき氷器は刃がだんだん脆くなってきたのか、イマイチ美味しいかき氷ができなくなっていました。
そのようなときに、天然氷のかき氷についての記事を見つけたのです。

一般的に食べられるかき氷のもととなる氷は、ほとんどが製氷工場で凍らせたものです。縁日や模擬店のかき氷だって、そういう氷を扱っている氷屋さんから買ってくるわけです。工場で作られた氷は、水の中の不純物や気泡も入っていないので、きれいに削ると口当たりがガリガリしないかき氷ができます。

しかし、天然氷というのはそれとは比べ物にならないほど貴重なものです。
製氷工場ではなく、冬の自然の寒さで凍らせたものなのです。製氷専用の池でゆっくりと凍らせ、厚みが増したら切り出して、藁をしきつめた氷室で保存します。
(氷を切り出すシーンは、アナ雪の冒頭部分を思い出してみてください)

工場で作る氷は冷凍庫で保存されているのですが、天然氷は昔ながらの氷室で保存するので、かき氷シーズンまでには半分以上が溶けてしまいますが、溶けなかった貴重な氷をかき氷にするという贅沢品です。今ほど冷凍工場がなかった時代には数多くあった天然氷の製造所や氷室もどんどん減り、今では数店舗を残すのみとなりました。

そんな貴重な天然氷のかき氷が食べられるお店が神奈川県内にはいくつかあります。
愛媛から帰ってきてから数日は、とてもかき氷を食べたくなるような天気ではなかったのですが、ようやく晴れ間がのぞいた日に、そんなお店に行くことにしました。

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私たちが行ったのは、葉山にある「霧原」というお店。
夏の間だけ臨時で出ているような風情です。
すぐとなりには、プレドールというこれもちょっとハイソな葉山っぽいベーカリーがあります。

霧原のかき氷は、日光でつくる天然氷を仕入れています。シロップはお店特製のモノです。シロップによって値段は変わってきますが、だいたい1000円程度しますので、かき氷としてはかなりお高めです。

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私たちが頼んだのは「小田原みかん」「マンゴーミルク」「波照間島の黒糖とミルク」です。シロップは別に添えられていて、途中で足しながらいただけます。

山盛りの氷は口に含むとフワフワして、じゃりじゃり感が全くありません。それにシロップがよく合います。シロップをかけるとその部分があっという間に溶けてしまうのではなく、氷にシロップが絡む感じです。かき氷を食べていると最後はシロップ色の水を飲んでるようになりますが、ここでは最後までふわりとした食感の氷を味わうことができました。また、ミルクもくどくなくて、特に黒糖シロップはそれだけだとだんだん苦味が出てしまうので、ミルクを足すとまろやかになりました。

ところで、かき氷を日常的に食べられるようになったのは日本の歴史を遡っても僅か数十年前からのことなのです。
我が国最古のかき氷の記録、それは古文の授業で一度は目にしたことがある最古のエッセイ、清少納言の「枕草子」にその記述があります。

「あてなるもの。…削り氷に甘葛入れて、新しき鋺に入れたる」
(上品なもの。細かく削った氷に甘いつゆをかけて、新しい金の椀に盛りつけたもの)


当時は冷凍庫などありませんから、氷は全て「天然氷」です。それを夏に京都にもってくるのだから、どれほど貴重なものだったことでしょう。当時は砂糖も貴重でしたから、甘葛という砂糖の代用品を甘味料としていました。貴族階級にあった清少納言でもめったに口にすることはできない、それこそ天皇のためのかき氷だったのではないでしょうか?江戸時代にあっても将軍以外はなかなか食べる機会はなかったことでしょう。そんな昔のことに思いを馳せながらかき氷を味わうのもいいと思います。