高畑勲展
日中はそれなりに気温が上がりますが、だいぶ過ごしやすくなってきました。
でも、こちらの展覧会を見たのは7月のことでした。
日本のアニメーション界では宮崎駿さんと双璧をなす、高畑勲さんの回顧展です。
そして、竹橋にある国立近代美術館を訪れたのは初めてでした(上野の美術館にはよく行くのに)。
高畑勲さんが関わったアニメ作品というと「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」などが思い浮かびますが、この回顧展では、もっとずっと前の時代からの高畑勲さんの作品が順を追って紹介されていました。
「太陽の王子 ホルスの大冒険」は、初めて監督になった長編アニメ映画です。そして、上映までには幾多の苦難が立ちはだかりました。
私は朝ドラの「なつぞら」は、ネットで筋書きを追っていたくらいでほとんど見ていなかったのですが、なつぞらに出てきた多くの登場人物のモデルとなった人物のがこの時代の東映動画(東映アニメーション)に登場していました。
そして、高畑勲さんの特記すべき点は「絵を描かない偉大なクリエイター」
アニメ作品の作り手は、ほとんどが自ら絵を描くところからスタートするのですが、高畑勲さんは描かないのです。描かないのだけど、イメージが広がる。それを具体化するのがアニメーターさんたちです。
「ホルスの大冒険」の後に東映動画を辞めた高畑勲さんは、テレビアニメの世界に入ります。
ここで、国民的なヒットアニメを生み出すのです。それが「アルプスの少女ハイジ」
アニメ作品のために、現地へロケハンに行ったことは最大の特徴でしょう。日本人にとってのハイジのイメージを決定づけ、ハイジを本国スイス以上の知名度の作品に押し上げました。そのハイジが、今では「家庭◯◯のトライ」のCMにばかり出てくるなんて…
会場には、いくつかのハイジのセットが作られていました。ここだけは撮影できます。
ハイジの次には「赤毛のアン」のアニメーションに関わった高畑勲さんは、その後は「じゃりんこチエ」等の国内を舞台にしたアニメ作品に携わり、やがて再び長編アニメーション映画を作り始めます。
「火垂るの墓」「平成狸合戦ぽんぽこ」「おもひでぽろぽろ」…そして「かぐや姫の物語」高畑勲さんの存在感はジブリ映画の歴史とともにありました。
そして、偉大なクリエイターである高畑勲さんの歩みをじっくりと鑑賞した日に、京都アニメーションであのむごたらしい事件が起こったことを忘れることはできません。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りいたします。