As You Like It     ~気が向くままに~

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少年H

8月は映画を見ないで終わったので、こちらは9月初旬に見たものです。
夏はどうしても「戦争を扱った物語」が多くなります。既に「風立ちぬ」と「終戦のエンペラー」と2つの戦争が出てくる話を見てしまったので、3つも見るのは重いかなぁ・・・と最初は思ったのですが、結果的に「戦争ものとしては一番よかった」と思えたのはこちらかもしれません。もっとも、見ようと思った一番の動機は「水谷豊&伊藤蘭夫妻が夫婦役で共演」だったからなのですが・・・
 
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少年H 監督:降旗康男  主演:水谷豊、伊藤蘭、吉岡竜輝
 
昭和初期の神戸。洋服仕立て職人の父・盛夫(水谷豊)とキリスト教徒の母・敏子(伊藤蘭)の間に生まれた肇(吉岡竜輝)は、胸にイニシャル「H」が入ったセーターを着ていることからエッチというあだ名が付いていた。好奇心旺盛で曲がったことが嫌いな肇だったが、オペラ音楽について指南してくれた近所の青年が特別高等警察に逮捕されるなど、第2次世界大戦の開戦を機にその生活は暗い影を帯びていく。やがて、彼は盛夫に対するスパイ容疑、学校で行われる軍事教練、妹の疎開といった出来事に直面し……。
1997年に発表されベストセラーを記録した、妹尾河童の自伝的小説を実写化したヒューマン・ドラマ。戦前から戦後までの神戸を舞台に、軍国化や戦争という暗い時代の影をはねつけながら生きる家族の姿を見つめていく。実際に夫婦でもある水谷豊と伊藤蘭が、テレビドラマ「事件記者チャボ!」以来となる共演を果たし、少年Hの父母を演じる。メガホンを取るのは、『鉄道員(ぽっぽや)』などの名匠・降旗康男。感動にあふれた物語もさることながら、当時の神戸の街並みを再現したオープンセットも見どころだ。
 
戦時中の一般家庭の生活を描いた・・・という観点から見ると、この妹尾家はかなり特殊な家庭ではないかと思うのですが(だって、父親がテーラーで、メインの顧客は居留地在住の外国人、母親はクリスチャンっていう家族はなかなかないと思います)、神戸だからこそ存在した家族だったのではないか、と思います。地理的なことを考えればきっと当時の横浜にも妹尾家のような家庭があったことでしょう。
 
そして、最初に妹尾家のお父さんが出てきた時、「ヤバい・・・どうみても刑事にしか見えない。ご近所さん役をやってるのが「相棒」ではおなじみの岸部一徳さんだから余計に右京さんに見えてくるし、それに「相棒」で右京さんがテーラーでスーツを仕立ててもらうシーンがあってそれと映像が重なってくるんだけど・・・」と思っていたのですが、いつの間にか右京さんではなくなっていました。
 

戦争の悲しさ、厳しさというと空襲にあって逃げ惑う人々の姿や戦災孤児学童疎開といったものが浮かびますが、この作品では一晩で神戸を焼き尽くした空襲のシーンもありましたが、隣の兄ちゃんが思想犯で捕まったり、父にスパイ容疑がかけられたり、その事で主人公も学校で嫌がらせをされたり、中学校では軍事教練に明け暮れる日々…といった国全体が軍部によって押し潰されてしまったような重苦しい日々が描かれていました。

たとえ国がそうであっても人々はその中で明るく生きていこうとするのですが、1945年8月15日を境に価値観が全く違ってしまいます。世の中の急激過ぎる変化に主人公はついていけません。周りも教えてはくれません。
あの戦争は何だったんだー!という彼の心の叫びはあの頃の誰もが抱いていたのではないかと思いました。